
福祉美容師は超高齢化社会に必要とされる仕事

高齢になっても、障がいがあっても、「美しく」いるということ、「キレイになりたい」と願うことは大きな生きがいになると言われています。福祉美容師は、移動が困難で美容サロンに足を運べないお客さまに、そんな「生きがい」を届ける仕事でもあります。そして、お客さまを笑顔にするだけでなく、自分も心から笑顔でいられる働き方が選べるのも福祉美容師の魅力のひとつです。これから日本が迎えると言われている超高齢化社会では、今以上に美容サロンに行きたくても行けないお客さまが増えることが予想されます。そんな世の中で自分らしく活躍できる福祉美容師になるにはどうすればいいのでしょうか?
福祉美容師の仕事内容と必要なスキルを取得する方法
福祉美容師とは、病気・障がい・高齢などの理由で美容サロンに行くことが困難な人のもとへ出向き、カットやシャンプーをはじめとする美容サービスを行う美容師のことです。美容サービスを受けるお客さまのご自宅や、介護施設、病院などが主な訪問先となります。介護施設などの中には、理美容専用のスペースを設けているところもあり、スタイリングチェアやシャンプー台などの設備が利用できることも。ただ、多くの場合は設備の整わないところでのサービスとなるため、状況に合せてポータブル式のシャンプー台などを持ち込んでサービスを行います。また、設備の有無にかかわらず、お客さまの体の状態や体調によっては寝たままの体勢などでサービスを行うことも想定しなくてはなりません。福祉美容師の仕事は「美容師免許」を持っていれば行うことは可能です。ただ、お客さまひとりひとりに合わせた施術を行うためには、介護などの専門知識も必要不可欠と言えます。本格的な介護の資格を取るのもいいですが、福祉美容に直結する知識を得たい場合には民間団体が主催する福祉美容師「養成講座」の受講もおすすめです。ほとんどの場合、受講後に何らかの認定資格を得ることができます。
具体的な認定資格の中から3つほど紹介しましょう。
認定資格1:「ヘアメイク・セラピスト(訪問福祉理美容師)」
一般社団法人日本訪問理美容推進協会が実施する「ヘアメイク・セラピスト(訪問福祉理美容師)認定講座」を修了すると与えられる資格です。ヘアメイク・セラピスト(訪問福祉理美容師)認定講座では、テキストでの事前学習と講習会場での座学・実技があり、介助の知識・必要な道具の選び方・寝たきりの人へのシャンプーやカットの方法などを学びます。座学・実技の期間は合せて1日で、受講費は25,000円(税別)。首都圏のほか、全国主要都市でも講座が行なわれており、講座のスケジュールは協会のホームページから確認することができます。
認定資格2:「日本美容福祉学会認定福祉美容師」
「日本美容福祉学会認定福祉美容師」は、NPO全国介護理美容福祉協会が実施する「福祉理美容師養成コース」を受講し、認定料(5,000円)を支払うと取得することができる資格です。東京・代々木で行われる講座は合計4日間受講する必要がありますが、連日で受ける必要はなく同じ年度内であれば間隔が開いても問題ありません。講座では、寝たきりの方への対応、ベッドからの起き上がりの介助、車椅子での移動など幅広く学びます。また、車椅子での着物の着付け方法や、高齢者向けのメイク法などが学べるのも特徴です。費用は受講料38,000円、教材費9,500円です。
認定資格3:「JVBWA・訪問福祉理美容師」
JVBWAこと一般社団法人日本訪問福祉理美容協会が主催する講義を修了すると取得できるのが「JVBWA・訪問福祉理美容師」の資格です。昼食休憩1時間を挟み、朝9時~夕方4時まで行われる講座では、福祉理美容師に必要な基礎知識、高齢のお客さまへの接客方法、障がいのあるお客さまへの施術方法、お客さまの移動の介助などを学びます。講座は全国主要都市で行われており、日程はJVBWAのホームページから確認することが可能です。受講費用は25,000円で、修了時には認定マークのステッカーがもらえます。また、発行料3,000円で顔写真入りのIDカードを発行してもらうことも可能です。
福祉美容師として仕事をする方法と働き方のメリット
福祉美容師として仕事をするには、大きく分けて2つの方法があります。1つ目は福祉美容師の会社に所属して仕事をする方法。2つ目は独立開業して福祉美容師の仕事をする方法です。福祉美容師の開業は店舗型の美容サロンの開業に比べて、コストも時間も少なく抑えられます。もちろん、シザーやコーム、持ち運べるシャンプー台、シャンプークロスやカットクロス、パーマやカラーの道具など最低限の道具を揃える必要はありますが、店舗設計や工事、設備等にかかる費用を丸々カットすることが可能。また、開業後にかかる固定費もほとんどありません。自宅を拠点とすればテナント料は発生しませんし、水道光熱費も低く抑えられます。福祉美容師の養成講座の中には、受講後の就業や開業へのアドバイスが受けられるものもあるので、講座を選ぶときにチェックしてみましょう。
そして、福祉美容師を目指す上でもう一つ重要なものがあります。それは、自動車の「運転免許」です。設備の整っているサロンで仕事をする場合と違い、福祉美容師は多くの場合、仕事道具と共に移動することになるので、運転免許は必須と考えましょう。
福祉美容師として仕事を始める方法には、それぞれメリットもデメリットもあります。自分にあった働き方を探してみましょう。
仕事をする方法1:会社に所属して福祉美容師の仕事をする
福祉美容師の会社に所属することの最大のメリットは、福祉美容師としてのノウハウが学べるということです。多くの会社では研修などの機会があるので、戸惑うことなく実際の業務に入って行くことができます。また、訪問するときに持っていく道具も会社から貸与されるので、自分で揃える必要がありません。会社に所属と言ってもいろいろな形態があり、福利厚生も充実した「正社員」から時間に融通が利きやすい「パート勤務」などさまざまな雇用形態があります。会社にもよりますが、給与は一般的な美容師とほぼ変わらないところが多いようです。
仕事をする方法2:独立開業して福祉美容師の仕事をする
独立開業する最大のメリットは、会社の指示ではなく自分の意思で仕事ができるという点です。その分、仕事を得るための営業活動や情報収集、スケジュール管理などは全て自分の責任で行わなければなりません。独立開業をするためには、関係機関に届け出等を行う必要があります。ただ、店舗型の美容サロンに比べてその手続きは簡単です。1人で開業する場合であれば、税務署に開業届けを提出します。税の優遇が受けられる「青色申告」にする場合はその手続きも必要です。保健所への届け出がいるかどうかについては市区町村で異なるため管轄の保健所に確認しましょう。
福祉美容師は自由度の高い働き方が選べるメリットも
福祉美容師は一般の美容サロン勤務に比べ、自由度の高い働き方ができるというメリットがあります。早朝や夜遅くに仕事があることはほとんどありませんし、土日に休みを取ることも比較的簡単です。そのため、子育てで第一線を離れた人の現場復帰の道の一つとしても注目されています。加えて、福祉美容師の仕事をするために得た介護の知識や実務の中で積み重ねられた経験は、家族や親せきなど身近な人に介護が必要となったときにも役立つに違いありません。また、さまざまなお客さまと接することはコミュニケーション力の向上にもつながるでしょう。
お客さまに合わせた柔軟な対応のできる福祉美容師を目指そう

福祉美容師は美容師としての技術に加え、介護の知識や、いろいろな相手に合わせられるコミュニケーション能力などさまざまなスキルが必要な仕事です。業務歴が長くなるとついついルーティンワークのようになってしまいがちですが、常に新鮮な気持ちでスキル磨きを怠らないように注意しましょう。
お客さまにとって、福祉美容師が訪れる日はちょっと特別な日であるかもしれません。髪を整えるだけでなく、いかに心地よく過ごしてもらい、いかに幸せな気持ちになってもらえたか、福祉美容師の仕事の神髄はそこにあるのではないでしょうか。
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