スタッフの満足度を上げるための教育方法とは?
美容サロンを経営する上で、スタッフの確保は顧客確保と同等に重要な課題ではないでしょうか。日本政策金融公庫が2018年3月に発表した「生活衛生関係営業の景気動向等調査特別調査」の結果によると、美容業を含む生活衛生関係企業では「1年前と比較し、従業員を確保しにくくなった」と回答した企業は約4割で、調査開始以来最高値となりました。美容業では約35%が「確保しにくくなった」と回答しており、その理由としては応募が少ない、待遇面で条件が合わない、といった理由と並び、「新規に雇用した者が定着せずに辞めてしまう」が挙げられています。特に、入職後3年以内の離職率は8割を超えるとのデータもあります。こういった状況の中で、「新規スタッフを教育しても一人前になる前に辞めてしまう」「技術を身につけたスタイリストは顧客を連れて独立してしまう」というお悩みを抱えるサロンオーナーも少なくないようです。今回は、そんな美容サロンの教育方法にスポットを当て、スタッフの満足度を上げ、お客様にも満足していただくために、どのような教育方法を取り入れたら良いのかについてご紹介します。
アシスタントやスタイリストのやる気を引き出そう
美容サロン経営には、顧客不足や人員不足、売上の低迷など、多くの悩みがつきものです。これらの原因や解決方法は、状況によりさまざまでしょう。しかし、実はサロンの問題の多くが、「スタッフの教育」で解消する可能性があることをご存知でしょうか。例えば、「お客様が増えない」という問題を考えてみましょう。顧客の確保には、新規客の獲得とリピート率の上昇という2つの方法があります。これらに共通するキーワードは「口コミ」です。「美容センサス2017年上期」では、現在利用しているサロンを知ったきっかけは男女ともに「友人・知人の口コミ」や「予約・口コミサイト」が上位に入っています。さらに同調査のサロンをリピートしなかった理由では、「仕上がりへの不満」や「スタッフの技術」、「スタッフの気遣いや対応」という回答が上位に挙げられました。
この調査結果から、新規客の獲得にもリピート率の上昇にも、スタッフの技術や接遇が重要であることが分かります。もちろん、料金面や交通の便などの要因も顧客獲得には大きく影響するのですが、技術面でも接客面でも顧客の信頼を得られるスタッフがいるサロンは、口コミ・評判が良くなり、新規客の獲得にもつながりやすいと言えるのです。
このため、特に新卒者や経験の浅い美容師を雇っているサロンでは、たいていアシスタントスタッフやスタイリストの教育を行っていることと思います。しかし、やみくもに指導・教育をしても、指導する側・される側ともに負担感ばかりが増し、スタッフの不満が蓄積し、定着率低下にもつながる恐れがあるのです。アシスタントやスタイリスト自身のやる気を引き出す効率の良い教育方法をとることで、サロンとしての評判も上がり、売り上げの拡大につながるとともに、スタッフが働きやすい環境を提供することが可能となります。
それでは、スタッフのやる気を引き出す教育方法について、具体的に考えていきましょう。
独自のカリキュラムを用意する
サロンメニューや顧客傾向は、店舗ごとにさまざまです。また、スタッフは新卒者が多いのか、中途採用が多いのかなどの傾向によっても、必要な指導・教育内容は異なってくるでしょう。そのため、サロンに合った教育カリキュラムを用意し、個々のスタッフの成長度に合わせて柔軟に対応できる指導システムを作っておくと安心です。カット、カラー、パーマなど、サロンで行っているメニュー項目ごとに、手順や注意事項を細かくまとめたチェックリストなどを作成し、順を追って技術習得できるようにすると良いでしょう。指導する側とされる側、双方の指導進行度の認識が一致しやすく、課題が明確化されやすいのもチェックリストの利点です。
積極的に交流し話しやすい環境を作る
あなた自身が新人時代に先輩スタイリストから指導を受けていた時のことを思い出してみてください。指導者やオーナー、店長とのコミュニケーションは十分に取れていたでしょうか。これは指導を受ける側だけに限ったことではなく、指導をする側を含む全スタッフに言えることですが、日々の業務の中での疑問や悩みを解消できないまま溜めこんでしまうと、大きなストレスにつながります。もちろん、疑問点を解決できないままでは成長もしにくいですよね。
「こんなことを聞いたら恥ずかしい」「忙しそうだから質問なんかしたら申し訳ない」などと指導対象者が萎縮してしまわないよう、小さなことでも遠慮なく相談できる環境づくりが必要です。また、時にはアシスタント同士、スタイリスト同士で交流する場を設けるのも効果的です。同じ境遇のスタッフ同士で相談しあったり励ましあったりすることで、サロン全体の雰囲気もより良くなることでしょう。
労働環境を整える
スタッフが安心して働けるよう、労働環境を整えることも重要です。サロン自体の環境はもちろんですが、給与や休日等の待遇面の検討や、スキルや業績が適切に評価される報奨制度などを取り入れているサロンもあります。休憩も取れずに早朝から深夜まで働きっぱなし…というようなことにならないよう、勤務時間やシフトの見直しが必要な場合もあります。自分の努力やスキルが認められるということは、新人でなくとも嬉しいものです。その積み重ねが自信につながり、やる気につながります。自身の成長を確認できる「全日本美容技術選手権大会」のようなコンテストへの挑戦を促してみるのも良いですね。
顧客を満足させるために!スタッフ教育で心掛けたいこと
ここまで、スタッフ教育の方法について考えてきました。美容サロンにおけるスタッフ教育の目的は、端的に言うと「売り上げの拡大」です。先述したように、スタッフの技術面、接遇面での善し悪しが顧客満足度に大きく影響します。顧客満足度が高ければリピート客となりやすく、さらに口コミでサロンとしての良い評判も広がりやすくなります。評判の良いサロンは新規顧客を獲得しやすくなり、高いリピート率と相まって売り上げの拡大につながっていくのです。また、売り上げの良い人気サロンではスタイリスト個人も評価を得やすくなり、給与も上がってスタッフ満足度が高まります。スタッフ満足度が上がればスタッフの定着率も上がり、高い技術を若手へと継承する機会も増えます。こうして良いスタッフが増えていくことで、さらなる顧客獲得へとつながっていきます。このように、顧客とスタッフ両方の満足度を上げることで売り上げを伸ばしていくことが、サロンにおけるスタッフ教育の一番の目的と言えるのです。とはいえ、オーナーや店長が売り上げありきでいたのでは、スタッフの満足度を上げることはできません。ここからは、顧客満足度を上げるためのスタッフ教育における留意点について解説していきましょう。
自分もセミナーに積極的に参加して勉強する
美容業界の技術は日々進化し、トレンドもまた日々変化しています。こうした業界においては、オーナーや店長などスタッフの上に立つ立場の美容師や、指導者となる先輩スタイリストが、常に最新の知識と技術を学び、自己研鑽することが大切です。それにより、後輩へより良い指導ができるだけでなく、学ぶ姿勢自体が良い手本となるのです。美容業界唯一の公的団体である全日本美容業生活衛生同業組合連合会では、美容師のスキルアップを目的とした認定制度を設けています。エステ、ネイル、メイク、着付、接遇・マナーの5種目で技術認定を受けられるほか、指導者向けのスキルを学べる講習会などもあります。こういったセミナーや講習会にオーナー自ら参加することで、スタッフのやる気を引き出すきっかけともなるでしょう。
練習できる環境や時間を確保
美容業界における指導場面では、一般的に、サロン営業中は先輩スタイリストの技術を見ながら勉強し、営業時間外に練習や勉強会をすることが多いかと思います。こういった時間外の教育は、当然給与も出ないため、特に新人にとっては負担感や不満が出やすいポイントとなります。とは言え、やはり欠くことのできない大切な勉強時間であり、ほとんどの先輩スタッフも通ってきた道でしょう。このため、時間外の自己学習時間も教育カリキュラムやスケジュールに最初から組み込み、曜日や時間を決めて行うなど、メリハリをつけて練習に打ち込める環境を用意しておくことが大切です。
接客術のノウハウをきちんと教える
美容師教育において、必要なのは技術面の指導だけではありません。一通りの技術は美容学校でも学んでいますが、接遇スキルは実際にお客様と接する中で身につけていくものです。基本的な挨拶や電話応対はもちろん、言葉遣いや身だしなみ、笑顔といった接客に欠かせないスキルまで、オーナーや先輩スタイリスト自身が手本となりながら指導していく必要があります。また、美容師は接客中にお客様と会話をすることも多いもの。しかし、中にはあまり話しかけて欲しくないお客様もいたりと、気を使う場面も多いことでしょう。このような相手に合わせた対応や、話題の選び方、会話の中からお客様の「こんな風に欲しい」という要望をくみ取るスキルなど、一言では教えられないノウハウもたくさんあると思います。
そういった経験に基づく接客のコツも、「見て学べ」ではなく指導する姿勢が大切なのです。
売り上げをアップさせるためにスタッフの教育に力を入れよう
美容サロンにおけるスタッフ教育の方法と、指導の際の留意点についてご説明してきました。最近では、サロン独自の教育システムをホームページやブログに公開している美容室も多くなってきました。そのような他サロンの教育方法を参考にするのは良いことですが、先述したようにサロンによってメニューもスタッフ層もさまざま。基本的にはサロン独自のカリキュラムを構築し、お店に合った方法で指導を行っていくことが大切です。より良い教育方法と指導環境で、スタッフ満足度を高め、顧客満足度も上げて人気サロンを目指していきましょう。
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